試験事例
二条大麦に対する苦土石灰連用試験(大分県杵築市)
1.試験経緯と目的
本試験は、日本苦土カルシウム肥料協会が会員メーカーの津久見ドロマイト工業(株)を窓口として大分県肥料植物防疫協会へ委託した試験である。試験調査につ
いては(株)古田産業が立ち会い協力し、大麦に対する苦土石灰連用区と無施用区との比較を3カ年継続で行った。
生育・収量調査は大分県東部振興局が担当し、土壌分析その他事項は(株)古田産業が行った。
この成績報告は試験開始3年目の2016年度大分県東部振興局の試験成績を中心に、当協会が追加資料として加筆・再編集したものである。
2.試験実施場所と試験期間
試験実施場所 : 大分県杵築市山香町福林
試験実施期間 : 2014年11月~2017年6月
3.圃場条件
(1) 地形 標高 95m
(2) 土壌 灰色低地土
(3) 土性 埴壌土
(4) 作土の深さ 15cm
(5) 前作作物 飼料用米(WCS)
(水田・麦作の二毛作)
4.耕種概要
(1) 品種名 ニシノホシ(二条大麦)
(2) 播種日 2017年1月5日
(3) 播種量 12Kg/10㌃
(4) 収穫日 2017年6月1日
5.施肥設計(10㌃当り)

6.圃場の見取り図

7.土壌分析結果
土性:埴壌土
腐植:3.15% / 100g
塩基置換容量(CEC):17.9meq / 100g
リン酸吸収係数:888

8.収量調査結果
刈り取り調査方法 180cm幅×70cm=1.26m² × 2反復にて刈り取り

9.刈り取り時の状況



10.大分県東部振興局による考察(※試験成績書を一部編集)
無施用区では、生育初期から明らかな生育差が見られ、試験区と比べて低収量であった大麦栽培において、石灰資材投入による酸度矯正が収量に大きく影響することが分かった。苦土石灰資材は、倍量区ほど酸度矯正効果も高いが、土壌中の交換性苦土や交換性石灰の値も高まるため、連用を考えた場合は土壌分析をして投入量を決定すべきである。
農家の意見等
大麦栽培での苦土石灰投入による酸度矯正効果を改めて認識できてよかった。
作物別の肥効試験
1.試験目的
酸性土壌に対する「苦土石灰」(苦土炭カル・苦土炭酸石灰)の肥料効果を確認する。
2.試験方法
2014~2017年にかけて大分県杵築市で行った「麦作に対する苦土石灰試験圃場」で採取した強酸性土壌(灰色低地土・埴壌土・塩基置換容量17.9meq/100g)を用い、各作物別のポット栽培試験を行った。なお、生育管理・収量調査・土壌分析は、協会会員メーカーの(株)古田産業が受け持った。
3.肥料設計
NPK肥料は元肥・追肥とも化成肥料8-8-8を用い、施肥量はポット面積で換算した量を、元肥はチッソ成分で20kg/10㌃施用、追肥はチッソ成分で5kg/10㌃の量を生育状況を見ながら適宜施用した 。
①ほうれん草:2018年9月16日播種・10月22日収穫(播種後36日)
栽培終了時の土壌分析結果(各2反復の平均値)
※P2O5、交換性塩基はmg/乾土100g



地下部の収量調査(各2ポットの合計)
酸性土壌区 4.4g (指数 100)
苦土石灰区 221.0g (指数 5,023)

強酸性土壌によるアルミニウムの障害?
②レタス:2018年9月16日セル苗定植・11月12日収穫(定植後57日)
栽培終了時の土壌分析結果 ※P2O5、交換性塩基はmg/乾土100g


移植後21日

移植後57日(栽培終了時)
地上部の収量調査(2株の合計)
酸性土壌区 505.1g(指数 100)
苦土石灰区 1,484.6g(指数 194)
③小松菜 : 2018年9月16日播種・10月15日収穫(播種後29日)
栽培終了時の土壌分析結果 ※P2O5、交換性塩基はmg/乾土100g


播種後21日

播種後29日(栽培終了時)

地上部の収量調査(10株の合計)
酸性土壌区 97.5g (指数 100)
苦土石灰区 345.1g (指数 294)
④キャベツ : 2018年9月16日 9cmポット苗定植 ・12月14日収穫(定植後89日)
栽培終了時の土壌分析結果 ※P2O5、交換性塩基はmg/乾土100g


移植後 21日

移植後 75日

移植後 89日(収穫時

地上部の収量調査
酸性土壌区 734g (指数 100) 商品化可能収量 0g
苦土石灰区 2,662g (指数 363) 商品化可能収量 1,582g